第98章 手加減はしない

杉浦秀明の表情が、ほんの一瞬だけ強張った。だがすぐに取り繕う。

複雑な顔で彼女を見つめ、「杏奈――」と口を開きかけたところで、

「あなたも会社と契約してるでしょ」

杉浦杏奈が遮った。

「でも、今年で満了。……この間の働きが一応は及第点だったから、自然に契約解除にしてあげる。仕事も、もう振らない」

胸の奥がじんと温かくなり、杉浦秀明は思わず声を弾ませる。

「杏奈……許してくれるのか?」

杏奈は鼻で笑った。

「許す? あなたが? 身の程を知りなよ。私はただ、二度と顔を見たくないだけ。今のその薄っぺらい善人面、吐き気がする」

忘れるはずがない。前の人生で、杉浦秀明もまた共犯だった...

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